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Initコンテナ
このページでは、Initコンテナについて概観します。Initコンテナとは、Pod内でアプリケーションコンテナの前に実行される特別なコンテナです。 Initコンテナにはアプリケーションコンテナのイメージに存在しないセットアップスクリプトやユーティリティーを含めることができます。
Initコンテナは、Podの仕様のうちcontainers
という配列(これがアプリケーションコンテナを示します)と並べて指定します。
Initコンテナを理解する
単一のPodは、Pod内にアプリケーションを実行している複数のコンテナを持つことができますが、同様に、アプリケーションコンテナが起動する前に実行されるInitコンテナも1つ以上持つことができます。
Initコンテナは下記の項目をのぞいて、通常のコンテナと全く同じものとなります。
- Initコンテナは常に完了するまで稼働します。
- 各Initコンテナは、次のInitコンテナが稼働する前に正常に完了しなくてはなりません。
もしあるPodの単一のInitコンテナが失敗した場合、Kubeletは成功するまで何度もそのInitコンテナを再起動します。しかし、もしそのPodのrestartPolicy
がNeverで、そのPodの起動時にInitコンテナが失敗した場合、KubernetesはそのPod全体を失敗として扱います。
PodにInitコンテナを指定するためには、Podの仕様にinitContainers
フィールドをcontainer
アイテムの配列として追加してください(アプリケーションのcontainers
フィールドとそのコンテンツに似ています)。
詳細については、APIリファレンスのContainerを参照してください。
Initコンテナのステータスは、.status.initContainerStatuses
フィールドにコンテナのステータスの配列として返されます(.status.containerStatuses
と同様)。
通常のコンテナとの違い
Initコンテナは、リソースリミット、ボリューム、セキュリティ設定などのアプリケーションコンテナの全てのフィールドと機能をサポートしています。しかし、Initコンテナに対するリソースリクエストやリソースリミットの扱いは異なります。リソースにて説明します。
また、InitコンテナはそのPodの準備ができる前に完了しなくてはならないため、lifecycle
、livenessProbe
、readinessProbe
およびstartupProbe
をサポートしていません。
複数のInitコンテナを単一のPodに対して指定した場合、KubeletはそれらのInitコンテナを1つずつ順番に実行します。各Initコンテナは、次のInitコンテナが稼働する前に正常終了しなくてはなりません。全てのInitコンテナの実行が完了すると、KubeletはPodのアプリケーションコンテナを初期化し、通常通り実行します。
Initコンテナを使用する
Initコンテナはアプリケーションコンテナのイメージとは分離されているため、コンテナの起動に関連したコードにおいていくつかの利点があります。
- Initコンテナはアプリケーションのイメージに存在しないセットアップ用のユーティリティーやカスタムコードを含むことができます。例えば、セットアップ中に
sed
、awk
、python
や、dig
のようなツールを使うためだけに、別のイメージを元にしてアプリケーションイメージを作る必要がなくなります。 - アプリケーションイメージをビルドする役割とデプロイする役割は、共同で単一のアプリケーションイメージをビルドする必要がないため、それぞれ独立して実施することができます。
- Initコンテナは同一Pod内のアプリケーションコンテナと別のファイルシステムビューで稼働することができます。その結果、アプリケーションコンテナがアクセスできないSecretに対するアクセス権限を得ることができます。
- Initコンテナはアプリケーションコンテナが開始する前に完了するまで実行されるため、Initコンテナを使用することで、特定の前提条件が満たされるまでアプリケーションコンテナの起動をブロックしたり遅らせることができます。前提条件が満たされると、Pod内の全てのアプリケーションコンテナを並行して起動することができます。
- Initコンテナはアプリケーションコンテナイメージの安全性を低下させるようなユーティリティーやカスタムコードを安全に実行することができます。不必要なツールを分離しておくことで、アプリケーションコンテナイメージのアタックサーフィスを制限することができます。
例
Initコンテナを活用する方法について、いくつかのアイデアを次に示します。
シェルコマンドを使って単一のServiceが作成されるのを待機する。
for i in {1..100}; do sleep 1; if nslookup myservice; then exit 0; fi; done; exit 1
以下のようなコマンドを使って下位のAPIからPodの情報をリモートサーバに登録する。
curl -X POST http://$MANAGEMENT_SERVICE_HOST:$MANAGEMENT_SERVICE_PORT/register -d 'instance=$(<POD_NAME>)&ip=$(<POD_IP>)'
以下のようなコマンドを使ってアプリケーションコンテナの起動を待機する。
sleep 60
gitリポジトリをVolumeにクローンする。
いくつかの値を設定ファイルに配置し、メインのアプリケーションコンテナのための設定ファイルを動的に生成するためのテンプレートツールを実行する。例えば、そのPodの
POD_IP
の値を設定ファイルに配置し、Jinjaを使ってメインのアプリケーションコンテナの設定ファイルを生成する。
Initコンテナの具体的な使用方法
下記の例は2つのInitコンテナを含むシンプルなPodを定義しています。
1つ目のInitコンテナはmyservies
の起動を、2つ目のInitコンテナはmydb
の起動をそれぞれ待ちます。両方のInitコンテナの実行が完了すると、Podはspec
セクションにあるアプリケーションコンテナを実行します。
apiVersion: v1
kind: Pod
metadata:
name: myapp-pod
labels:
app.kubernetes.io/name: MyApp
spec:
containers:
- name: myapp-container
image: busybox:1.28
command: ['sh', '-c', 'echo The app is running! && sleep 3600']
initContainers:
- name: init-myservice
image: busybox:1.28
command: ['sh', '-c', "until nslookup myservice.$(cat /var/run/secrets/kubernetes.io/serviceaccount/namespace).svc.cluster.local; do echo waiting for myservice; sleep 2; done"]
- name: init-mydb
image: busybox:1.28
command: ['sh', '-c', "until nslookup mydb.$(cat /var/run/secrets/kubernetes.io/serviceaccount/namespace).svc.cluster.local; do echo waiting for mydb; sleep 2; done"]
次のコマンドを実行して、このPodを開始できます。
kubectl apply -f myapp.yaml
実行結果は下記のようになります。
pod/myapp-pod created
そして次のコマンドでステータスを確認します。
kubectl get -f myapp.yaml
実行結果は下記のようになります。
NAME READY STATUS RESTARTS AGE
myapp-pod 0/1 Init:0/2 0 6m
より詳細な情報は次のコマンドで確認します。
kubectl describe -f myapp.yaml
実行結果は下記のようになります。
Name: myapp-pod
Namespace: default
[...]
Labels: app.kubernetes.io/name=MyApp
Status: Pending
[...]
Init Containers:
init-myservice:
[...]
State: Running
[...]
init-mydb:
[...]
State: Waiting
Reason: PodInitializing
Ready: False
[...]
Containers:
myapp-container:
[...]
State: Waiting
Reason: PodInitializing
Ready: False
[...]
Events:
FirstSeen LastSeen Count From SubObjectPath Type Reason Message
--------- -------- ----- ---- ------------- -------- ------ -------
16s 16s 1 {default-scheduler } Normal Scheduled Successfully assigned myapp-pod to 172.17.4.201
16s 16s 1 {kubelet 172.17.4.201} spec.initContainers{init-myservice} Normal Pulling pulling image "busybox"
13s 13s 1 {kubelet 172.17.4.201} spec.initContainers{init-myservice} Normal Pulled Successfully pulled image "busybox"
13s 13s 1 {kubelet 172.17.4.201} spec.initContainers{init-myservice} Normal Created Created container with docker id 5ced34a04634; Security:[seccomp=unconfined]
13s 13s 1 {kubelet 172.17.4.201} spec.initContainers{init-myservice} Normal Started Started container with docker id 5ced34a04634
このPod内のInitコンテナのログを確認するためには、次のコマンドを実行します。
kubectl logs myapp-pod -c init-myservice # 1つ目のInitコンテナを調査する
kubectl logs myapp-pod -c init-mydb # 2つ目のInitコンテナを調査する
この時点で、これらのInitコンテナはmydb
とmyservice
という名前のServiceの検出を待機しています。
これらのServiceを検出させるための構成は以下の通りです。
---
apiVersion: v1
kind: Service
metadata:
name: myservice
spec:
ports:
- protocol: TCP
port: 80
targetPort: 9376
---
apiVersion: v1
kind: Service
metadata:
name: mydb
spec:
ports:
- protocol: TCP
port: 80
targetPort: 9377
mydb
およびmyservice
というServiceを作成するために、以下のコマンドを実行します。
kubectl apply -f services.yaml
実行結果は下記のようになります。
service/myservice created
service/mydb created
Initコンテナが完了し、myapp-pod
というPodがRunning状態に移行したことが確認できます。
kubectl get -f myapp.yaml
実行結果は下記のようになります。
NAME READY STATUS RESTARTS AGE
myapp-pod 1/1 Running 0 9m
このシンプルな例を独自のInitコンテナを作成する際の参考にしてください。次の項目にさらに詳細な使用例に関するリンクがあります。
Initコンテナのふるまいに関する詳細
Podの起動時に、kubeletはネットワークおよびストレージの準備が整うまで、Initコンテナを実行可能な状態にしません。また、kubeletはPodのspecに定義された順番に従ってPodのInitコンテナを起動します。
各Initコンテナは次のInitコンテナが起動する前に正常に終了しなくてはなりません。もしあるInitコンテナがランタイムにより起動失敗した場合、もしくはエラーで終了した場合、そのPodのrestartPolicy
の値に従ってリトライされます。しかし、もしPodのrestartPolicy
がAlways
に設定されていた場合、InitコンテナのrestartPolicy
はOnFailure
が適用されます。
Podは全てのInitコンテナが完了するまでReady
状態となりません。Initコンテナ上のポートはServiceによって集約されません。初期化中のPodのステータスはPending
となりますが、Initialized
という値はtrueとなります。
もしそのPodを再起動するとき、または再起動されたとき、全てのInitコンテナは必ず再度実行されます。
Initコンテナの仕様の変更は、コンテナイメージのフィールドのみに制限されています。 Initコンテナのイメージフィールド値を変更すると、そのPodは再起動されます。
Initコンテナは何度も再起動、リトライおよび再実行可能なため、べき等(Idempotent)である必要があります。特に、EmptyDirs
にファイルを書き込むコードは、書き込み先のファイルがすでに存在している可能性を考慮に入れる必要があります。
Initコンテナはアプリケーションコンテナの全てのフィールドを持っています。しかしKubernetesは、Initコンテナが完了と異なる状態を定義できないためreadinessProbe
が使用されることを禁止しています。これはバリデーションの際に適用されます。
Initコンテナがずっと失敗し続けたままの状態を防ぐために、PodにactiveDeadlineSeconds
を設定してください。activeDeadlineSeconds
の設定はInitコンテナが実行中の時間にも適用されます。しかしactiveDeadlineSeconds
はInitコンテナが終了した後でも効果があるため、チームがアプリケーションをJobとしてデプロイする場合にのみ使用することが推奨されています。
すでに正しく動作しているPodはactiveDeadlineSeconds
を設定すると強制終了されます。
Pod内の各アプリケーションコンテナとInitコンテナの名前はユニークである必要があります。他のコンテナと同じ名前を共有していた場合、バリデーションエラーが返されます。
リソース
Initコンテナの順序と実行を考えるとき、リソースの使用に関して下記のルールが適用されます。
- 全てのInitコンテナの中で定義された最も高いリソースリクエストとリソースリミットが、有効なinitリクエスト/リミット になります。いずれかのリソースでリミットが設定されていない場合、これが最上級のリミットとみなされます。
- Podのリソースの有効なリクエスト/リミット は、下記の2つの中のどちらか高い方となります。
- リソースに対する全てのアプリケーションコンテナのリクエスト/リミットの合計
- リソースに対する有効なinitリクエスト/リミット
- スケジューリングは有効なリクエスト/リミットに基づいて実行されます。つまり、InitコンテナはPodの生存中には使用されない初期化用のリソースを確保することができます。
- Podの有効なQoS(quality of service)ティアー は、Initコンテナとアプリケーションコンテナで同様です。
クォータとリミットは有効なPodリクエストとリミットに基づいて適用されます。
Podレベルのコントロールグループ(cgroups)は、スケジューラーと同様に、有効なPodリクエストとリミットに基づいています。
Podの再起動の理由
以下の理由によりPodは再起動し、Initコンテナの再実行も引き起こす可能性があります。
- そのPodのインフラストラクチャーコンテナが再起動された場合。これはあまり起きるものでなく、Nodeに対するルート権限を持ったユーザーにより行われることがあります。
restartPolicy
がAlways
と設定されているPod内の全てのコンテナが停止され、強制的に再起動が行われたことで、ガベージコレクションによりInitコンテナの完了記録が失われた場合。
Kubernetes v1.20以降では、initコンテナのイメージが変更されたり、ガベージコレクションによってinitコンテナの完了記録が失われたりした場合でも、Podは再起動されません。以前のバージョンを使用している場合は、対応バージョンのドキュメントを参照してください。
次の項目
- Initコンテナを含むPodの作成方法について学ぶ。
- Initコンテナのデバッグを行う方法について学ぶ。